スパークリングコラム番外編 ワイン以外の泡について
スパークリングコラム番外編 ワイン以外の泡について
スパークリングワインの基本的な造り方についてはスパークリングコラムの第一弾で触れましたが、今回は番外編として、他の酒類がどのようにして「泡」を得ているかについて書いて行きたいと思います。
まだ読まれていないかたは第一弾を先に読まれて発泡の仕組みがわかっていると読みやすいと思います。
1.ビール
ビールは「泡」を持つ飲み物の代表格と言っていいと思います。
泡の層が持続するという性質は他の酒類にはないものですよね。
泡を生成する仕組みには他と大きな差はありませんが、ビールは泡を持続する成分として、麦芽由来のタンパク質、ホップ由来の苦味成分「イソα酸」、また多糖類なども関与して泡の持続性を作っているとされています。
反対に脂肪や脂肪酸などは泡持ちをわるくする要因になると言われています。
注ぎはじめの荒い泡、いわゆる「カニ泡」は空気を含んだ泡で、きめ細かい泡は炭酸ガスによって生まれています。
以下にどのようにして炭酸ガスを得るかという製法についてまとめて行きますね。
Ⅰ.伝統的製法
ドイツの小規模醸造所などで用いられる製法です。
ビールの醗酵終期に、「クロイゼン」と呼ばれる醗酵初期の元気なもろみを添加し密封することで泡を得る方法です。
Ⅱ.瓶内二次醗酵(プライミング)
シャンパーニュの伝統製法に近い方法で、トラピストビールなどが代表的です。
醗酵後に糖や酵母等を添加し瓶詰めする事で泡を獲得します。
瓶内にオリが残存するが、年単位で熟成するものも多い。
(シャンパーニュはオリを取り除きますよね)
Ⅲ.醗酵+補助的ガス添加
伝統製法と同様、クロイゼンを添加することでガスを得つつ、後から炭酸ガス充填によりガス圧を調整します。
Ⅳ.醗酵+ガス添加
醗酵後、ガス充填をします。
醗酵によるガスを残すと言うよりは、ガス添加による泡が主体となります。
高温短期で醗酵させる上面醗酵ビールなどでは、炭酸ガスの添加が必要になる場合が多い。
2.清酒
写真:MIZUBASHO PURE
清酒はビール同様、原料のデンプンを糖に変える「糖化」と糖をアルコールに変える「アルコール発酵」の二つの醗酵を要する「複醗酵」の酒類ですが、この複醗酵の中でも二つの醗酵を同時に行う「平行複醗酵」という特に複雑な醗酵形態を取り、安定的に造るには高度な技術を要します。
Ⅰ.瓶内醗酵
醗酵後搾った清酒と、元気なもろみを粗漉ししたものを混合し瓶詰めする事で瓶内醗酵させる。ビールのクロイゼンに近い製法。
シャンパーニュとはオリの性質が違うため工夫を要するが、オリを瓶口に集め凍結させ取り除く製法によりクリアなスパークリング清酒を造ることにも成功している。
シャンパーニュと違い、瓶内で二つの醗酵が行われるため、安定が難しい。
また、シャンパーニュの場合はオリとの接触により複雑さを得るという目的もあるが、清酒においてそれは通常目的とされません。
Ⅱ.活性にごり
ビールやワインと違い、比較的「にごり」が商品特性として受け入れられているというのも清酒の特徴かもしれません。
活性にごりは比較的伝統的な手法で、醗酵途中のもろみを瓶詰めすることで醗酵のガスを瓶に閉じ込めます。
通常、アルコール発酵だけでなく糖化も継続するため、
Ⅲ.ガス添加
醗酵後にガスを添加する方式。
設備投資を要するが、安定的であるという点、また様々な香味バリエーションのお酒にガスを添加できるという点で優れている。
3.おまけ:エスプーマ
写真:エスプーマ公式サイトより 「生姜」エスプーマドリンク
酒類ではありませんが、最近はガスによる泡を料理に応用する手法も流行っていますね。
世界一予約の取れないレストランとして知られている「エル・ブジ」が発祥と言われています。
「ムース」というとフランス語で「泡」。
生クリームなどを泡だて器で泡立てるイメージです。
「エスプーマ」はスペイン語で「泡」。
ムースと違うのは専用の機械を使うため、様々な食材に応用することができるという点です。
写真:エスプーマ公式サイトより エスプーマビシソワーズ
仕組みとしては、圧力下で食材となじんだガスが、噴出されるとともに膨張し、一緒にペースト状の食材も膨張することで泡になるというものです。
酒類の泡は炭酸ガスによるパチパチとはじける泡ですが、エスプーマの場合は「炭酸ガス」を使用する場合と「亜酸化窒素ガス」を使用する場合とがあります。
「炭酸ガス」を使用するエスプーマはカートリッジを市販で購入できるため、比較的手軽ですが、炭酸ガス独特の酸味が食材に影響してしまうというデメリットがあります。
一方「亜酸化窒素ガス」は無味無臭ではありますが、直接吸入すると麻酔効果などがあり、日本ではカートリッジの一般販売はできません。
飲食店などに専用の業者が設置し、管理・把握する必要があります。
以上、今回はワインからは離れた内容になりましたが(最後は特に)、他の酒類の事も理解しておくとより一層ワインの事も理解できるように思います。
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次回からまたワインの話題に戻って行きます。
参考文献:きた産業レポート